ポークパイパーカッション
社長であり創業者であもあるBill Detamore氏が1982年頃に趣味としてドラム作りを始める。中古のドラムを買いパーツを取り外し、また組み立ててその構造を研究した。当時ドラムに関する情報は少なく、 モダンドラマーマガジンの記事が唯一の情報源であった。
1985年頃モダンドラマーマガジンにスネアドラムキットの販売広告が出ているのを見て購入した。このキットはFibes社の前進であうCorder Drum Companyから売り出されていた。 このスネアキットにはシェル、ラグ、ストレイナー等全てが揃っていたがビルはこのキットに付属していた大きなハンドルのストレイナーは好きではなかったためラディックのP-85ストレイナーを使うことにした。 塗装の仕方は父親に教わり、ベアリングエッジやスネアベッドは自分で研究し削り1代目のスネアを作り上げ販売した。このキットを数台作った後ケラー社からシェルを買えるまでになりPork Pie Percussionをスタートさせた。
もちろんドラム販売だけでは食べていけないので並行して会社員として働いていたがその仕事はあまり好きではなかった。そんな時にDW社のJohn Good氏から電話をもらいパートタイムとしてペイント作業の仕事をするようになる。 まだ会社員として働いていたためその仕事が終わったあとに3,4時間DWでペイント作業の仕事をした。さらにその後家に帰り自分のところにきた注文をこなした。 さすがに多忙を極めたためビルは精神的にも肉体的にも参っていた。
そこでビルはDWでフルタイムの仕事が出来るようにジョンに直訴し働けることとなった。約1年DWで働いた後1989年6月にPork Pie Percussion一本でやっていく覚悟を決め独立を果たす。 ビルにとってはその時期が一番良い時期であった。なぜならガールフレンドもいなく、車のローンも払い終わっていた。唯一面倒を見なければならないのは愛犬に餌をあげることだけだったからである。
独立して最初の仕事には面白い話があります。ある日新品のノーブルアンドクーリーのスネアを持ち込んできたお客さんにエッジ加工の依頼を受けた。ビルはルーターに向かい作業を始めたがその日はとても暑く汗で手が滑りエッジを傷つけてしまった。 結局新品のノーブルアンドクーリーを買い交換するはめになった。
傷つけてしまったスネアはその後エッジを削り直し今ではドラムレンタル会社で活躍しています。
現在では様々なタイプのシェルを様々なメーカーから購入しているが独立当初は主にケラーからメイプルシェルを買って使っていた。他にもシェルメーカーはあったのだが大量に買わなければならず金銭的に無理であった。 その後事業が拡大するにつれて様々なメーカーからいろいろな材でシェルを購入するようになる。最近ではイギリスのCarrera社からWalnutやMahogany等のいろいろなシェルやウッドとブラスを組み合わせたシェルなどを購入していた。 そかしCarreraのDave Carrera氏が重い肺の病気のため2015年3月に事業をたたんでしまった。彼が使っていた道具はNorth Custom Drum社が買い取り現在も使われている。
またこんな話もある。会社を始めた頃は10”のスネアはポピュラーでなかったためいろいろな苦労があった。スネアサイドのフープやスナッピーが手に入らなかったのでドリルややすりを使い改造した。
最初のメタルスネアは金属彫刻家である友人のLarry Gillにシェルを作ってもらい制作した。彼からしばらくの間ヘヴィーブラスシェルを購入していた。おそらく30,40台は作ったと思う。それらは彼にとって特別なスネアである。
その後ギターセンターの依頼によりBig Blackスネアを作る。これがビルにとって初めての大きな仕事となった。ギターセンターは当初他の業者からメタルスネアを買っていたが製作台数に限りがあったため他の業者を探していた。 ギターセンターの担当者がビルに電話をかけ取引することが決まった。そしてビルは台湾に渡りメタルシェルを作ってもらいBig Blackスネアが完成した。
次にギターセンターより100年間土の中に埋められていた見た目のスネアが出来ないか話を持ち込まれた。こにフィニッシュは以前友人のLarryと作ったスネアと」同じ仕上げ(Patina パティーナ)であったのでビルはすぐにOKの返事をした。 そして再び台湾に行きPatinaフィニッシュのやり方を教えシェルを作り13×7 Patina Brass Snareが完成した。これも大きな成功を収め今でも人気のあるスネアとなっている。
ビルに夢を聞いたら、「50年後にヴィンテージドラムとして楽器店に置いてあること」と答えた。
Pork Pie Percussionの名前の由来は友人と家でくつろいでいる時に見ていたニュージーランド映画の”Goodbye Pork Pie”から付けたそうだ。
最後にPork Pie Percussionのドラムのシェルの内側にはBill Detamoreのサインがあります。これは全ての製品に対する責任の印しです。
そしてビル曰く、「もっとも大切な道具は手です」